PRワン・ポイント講座
この2つのPR用語は、混同して使われがちです。いわゆるパブリシティ活動は、対象が印刷媒体であれば記事掲載を目的にメディアに情報提供する行為であり、いわば一方向性の情報発信です。
一方、メディア・リレーションズは、情報発信者(企業や団体など)とメディアとの相互理解と信頼関係の構築を通して有効なパブリシティを期待するものです。情報発信者には、対象メディアの報道視点や記者、編集者の情報ニーズを十分認識したうえで的確な情報を提供していくことが求められます。この意味で、メディア・リレーションズは双方向性をもつコミュニケーションであるといえます。
マーコムはマーケティング活動全般をサポートし、企業が提供する製品やサービスの優位性を確立するためのコミュニケーション活動です。したがって、広告やSP活動も含まれます。一方、CCは企業が理念や経営情報を消費者、株主、社会などのターゲットに伝え、相互信頼関係を構築していくための活動で、経営トップの意思が強く反映されます。より透明性の高い経営が求められる今日、その重要性は高まってきています。また、CCはコーポレートPRとほぼ同義語として使われます。
イッシュー・マネジメントとは、予測される新たな課題や問題を抽出し、それらへの対応策を考え、実施することで、「問題管理」とも言われています。イッシュー(問題)があるのに、それを無視することは、後でクライシスを引き起こす原因となります。一方、リスク・マネジメントはリスクの認識と予見を通して、その回避策を講じることです。また、不可避なリスクについてはそれを第三者に転嫁するか、保険で対応するか、あるいは自己が危険負担するといった一切のプロセスをも意味します。
記者会見は、ニュース価値の高いトピックがある場合に催されるもので、会場レイアウトは通常、規模と関係なくスクール形式にセッティングされます。一方記者懇談会は、特にトピックがない場合でも、経営トップが経営や技術・製品・サービス情報をアップデートしたり、プレスとの意見交換の場としても設定されます。記者会見に比べたら招待プレスも絞られ、食事をしながら質疑応答セッションを行なうなど会場構成も含めできるだけフレンドリーな雰囲気を演出します。
リテイナーフィーとは特定のサービスに対して支払われる依頼料のこと。PR会社とクライアント(顧客)との基本的な関係はコンサルテーションを核に継続的な業務をベースとして年間契約で、その内容によって月額のリテイナーフィーが設定されます。フィー換算はタイムフィー(1時間あたりの料金)に基づきます。トップレベルからスタッフレベルまでキャリアによってタイムフィーは異なります。一方、プロジェクトフィーは契約外の業務に対して適用され、この場合もタイムフィーがベースとなります。
「パブリック」とは一般社会(公衆)のことを意味しますが、パブリックは多くの集団から構成されています。企業が事業を行うにあたって関与する集団のことを「ステークホルダー」(従業員を含めた利害関係者)といいます。たとえば、増資にあたっては株主、証券会社、監督官庁が、新製品の上市の場合は卸・小売企業や顧客などがステークホルダーとなります。したがって情報発信においても、目的やテーマに合わせ、対象となるステークホルダーごとにメッセージや伝達方法が異なってきます。
PR会社が顧客に提供するサービスは多種多様な広がりを持っています。大きく分けると、戦略の策定や企画の立案力に強い会社(コンサルティング志向)と、フットワークやオンサイトのサポートを得意とする会社(エージェンシー志向)の2つのタイプがあります。PR会社に「頭脳」(コンサルティング、プランニング)を期待するのか、「手足」(現場の代行業務)を求めるのか、要件を整理してPR会社の選定にあたらないと、発注側・受注側のミスマッチの原因となります。
企業がPR会社に依頼する業務は、コンサルティングを主としたものから実施を含むすべてのPR業務をアウトソーシングするものまで多様なケースがあります。戦略的PRの立案、実施には高度な専門性と知識が要求され、経験豊富なPR会社を起用すれば、日常業務に加え、さまざまなイッシューに精通した専門家によるアドバイスも得られます。社内広報部とPR会社のコンソーシングの場合は、それぞれのパートナーとして対等な立場で接することが不可欠です。
企業が主にメディアに対して記者会見などの公の場で経営情報や事業計画などを発表する場合、社を代表して説明する人間が「スポークスパーソン(SP)」です。会社の経営に関する事項や重要問題などでは社長(CEO)がなるのが普通です。トピックによっては、担当役員(技術担当、営業担当など)や広報部長がSPとなります。メディアに登場するSPは企業の「顔」としてステークホルダーから受けとめられますので、その発言や印象は企業イメージ構築にとって大切です。
メディアから取材を受ける際は、メディアの向こうにいる読者(マーケット)に対してメッセージを伝えるという意識を持って臨むべきです。記者への不適切な対応による不測のダメージを防ぐには、予めメディアの特性や取材目的を把握しておくとともに、提供すべき情報を整理しておくことが大切です。また、言葉遣いや表現方法、接見態度やマナー、表情や身だしなみなども重要です。PR会社では、専門家によるレクチャーやシミュレーション(模擬会見)、評価などを含むトレーニングを行っています。
企業が大きな不祥事を起こした際に開かれる記者会見で、経営トップが揃って深々と頭を下げ謝罪するシーンは、視聴者にとって見慣れたものになりつつあります。こうした会見でのプレス対応の不手際で、さらにダメージを広げ社長交代にまで追い詰められたケースも少なくありません。緊急事態の広報対応で企業が最も避けるべきことはどのようなことか――日本PR協会が行ったアンケート調査(2003年)にみられた「記者からの回答」は次のようになりました。断然に多かったのは、「会見でのウソ、隠蔽」と「マスコミの取材を一切拒否」の2つで、ついで「トップが記者会見に出ない企業対応」「トップが情報を知らずに会見に臨む事態」「ミスリードしたり世論を誘導するような対応」の順になりました。
メディア・リレーションズと広告はその内容をよく混同されがちですが、実際にはこの2つは全く異なる性質を持つものです。下記の図に両者の違いをまとめましたので参考にして下さい。
メディア・リレーションズ | 広告 |
---|---|
メディアに情報を提供するが、スペースの購入は発生しない | メッセージを伝えるために、メディアのスペース/時間を購入する |
記事の掲載は不確実(掲載を決めるのは記者・編集者側) | 広告の掲載は確実(掲載の決めるのは広告主) |
客観的な情報(第3者の目を通すため) | 主観的な情報 |
情報の信憑性が高い | 情報の信憑性は比較的低い |
コストが比較的低い | コストが高い |
企業が企画・編集機能を持ち、独自コンテンツをパブリッシュする「ブランド・ジャーナリズム」は、2014年10月にワシントンD.C.で開かれた米国パブリック・リレーションズ協会の年次総会のキーワードの1つでした。
ブランド・ジャーナリズムは、ジャーナリズムと呼ばれることからも「客観性」がポイント。企業が何かを「アナウンス」するというより、公平で偏りのない情報を提供することで、一般市民・消費者の信頼を得ようとするところに特徴があります。マスメディアの記者にクライアント企業の記事をいかに効果的に書いてもらうかは、伝統的なPRの重要なミッションの1つでした。今後は、一般市民・消費者に対するネットを活用した直接の情報発信に対するサポートの重要性がいっそう増すことになります。
この新たな局面において、逆に古くからある「物語:ストーリー」というコンセプトが再び注目を集めています。